人通りの少ない閑静な住宅地に、ポツンと残っている廃診療所。外壁は黒ずみ、敷地内には草木が生い茂っている。
地域住民が使用しているのだろうか。駐車場には車が停まっていた。民家に隣接しているため、ガラスの損壊は、この手の廃墟にしては驚くほど少ない。
病院系の廃墟はもれなく心霊スポットになる傾向があるが、ここは例外のようだ。
中を見てみるとその理由が分かる。残留物が殆ど無いのだ。わかりやすい残留物が無ければ、肝試しも雰囲気が出ないのだろう。
心霊スポットでは無いと言ったが、実はこの廃診療所は、心霊マニアが喜びそうな曰く付き物件である。
この廃診療所の1階の準備室から、ホルマリン漬けの男性嬰児2体が発見されたことがある。死後30年以上が経過しており、現在も身元はわかっていないという。
行旅死亡人として処理された彼らの怨念が、夜な夜な彷徨っていても不思議では無いはずだが、そんな噂を聞くことは無い。結局、心霊現象というものは、生きている人間の匙加減ひとつで決まるものなのだ。
残留物の少なさに飽きてきたところで、一番の見所である手術室へと向かう。
お目当ての手術室へ。見たことの無い透明な手術台がある。透けていると手術時に色々と便利なのだろうか。素人にはわからないことばかりだ。
窓が閉め切られた真夏の手術室は、暑さが尋常ではない。滝のように汗が噴き出してくる。
手術台に映った無影灯は、この廃診療所ならではの光景だ。廃墟としても、心霊スポットとしても中途半端な物件ではあるが、そこそこ楽しむことが出来た。
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